【カミーノ第二の終着点】世界の果てフィステーラを目指す道
本記事ではカミーノ、フィステーラの道の概要をご紹介します。
スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すスペイン巡礼。
実は、スペイン巡礼のゴールである聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを出発点にした、さらなる巡礼のルートが存在するのをご存知ですか?
そのルートの目的地は「世界の果て」フィステーラ。
スペイン巡礼の最終目的地として知られている場所です。
聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着したあと、最終目的地フィステーラを目指し再びカミーノを始める巡礼者たちもいます。
スペイン巡礼者たちをさらなる旅に駆り立てるフィステーラとはどんな場所なのか?
本記事では、フィステーラの道の概要や巡礼路情報をご紹介します。
「世界の果て」フィステーラってどんな場所?
フィステーラFisterraは、サンティアゴ・デ・コンポステーラのさらに西側に位置しているガリシア州の半島にある町。
フィステーラとはスペイン語で「地の果て」という意味を持ち、フィステーラの半島の先にはフィステーラ岬Faro de Fisterraと呼ばれる場所があります。
フィステーラ岬は、海に囲まれた断崖絶壁の地。
陸が終わり、果てしなく続く海を目の前にする光景から、紀元前から中世初期まではフィステーラ岬が「地の果て」だと信じられてきました。
現代でもフィステーラは ”End of the world” ”World’s end” などと呼ばれている土地です。
スペイン巡礼においては、フィステーラにはその昔、古代都市Dugiumドゥヒウムがあったとされています。
聖ヤコブの遺体を埋葬するために弟子たちが向かった場所と言われています。
実際のところ、聖ヤコブにまつわる場所であり「世界の果て」という名が付くくらい特別な場所であることは確かですが、フィステーラへの巡礼のはっきりした理由は定かではありません。
それでも、フィステーラは「スペイン巡礼の最終目的地」として古くから知られ、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラから最終目的地フィステーラへと続く道は「フィステーラの道Camino de Fisterra」と呼ばれています。
ちなみに、フィステーラFisterraとフィニステレFinisterreという似て異なる表記がありますが、フィステーラはガリシア語、フィニステレはスペイン語表記であり、全く同じ場所を指しています。
フィステーラの道のルート概要
フィステーラの道の出発点は、サンティアゴ・デ・コンポステーラにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂Catedral de Santiago de Compostela。
いくつもあるスペイン巡礼の巡礼路のゴール地点が、フィステーラの道の出発点です。
フィステーラの道のゴールは、フィステーラの町の中心部から3.2km離れた場所に位置するフィステーラ岬の灯台Faro de Fisterra。
「地の果て」と呼ばれるその場所が、フィステーラの道のゴールです。
Camino de Fisterra
出発点:サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂
終着点:フィステーラ岬
総距離:89.6km
フィステーラの道の総距離は89.6kmと短いカミーノです。
3日間で歩くのが定番にはなっていますが、何日間で歩くのかは人それぞれです。
フィステーラ岬にはカミーノの終着を告げる0.000kmのモホンが建っています。
フィステーラの道の黄色の矢印
フィステーラの道も、他のカミーノと同じように巡礼路を示す黄色の矢印が書かれています。
フィステーラの道は、通常黄色い矢印と一緒にFisterraの頭文字をとった「F」の文字が一緒に書かれています。
フィステーラの道ルート概要
フィステーラの道はサンティアゴ・デ・コンポステーラを出発すると、そのほとんどをガリシア州の田舎町や農村部を歩きます。
大きな街は一つもなく、小さな集落や村を通るカミーノ。
フィステーラの道の終盤で通過するセーCeeという町が、唯一の比較的大きな町です。
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでのスペイン巡礼の賑わいやの活気とは離れた、一人で静寂の中にある自然の音を楽しむような静かなカミーノです。
登り坂はありますが、足を持ち上げて登るような急な坂道はないため、景色を楽しむ余裕を持ちながら歩けるルートです。
フィステーラの道のゴールであるフィステーラは、穏やかな海の町。
開放的でありながら、落ち着きのあるゆるりとした雰囲気があり、カミーノの終着点ならではの独特の空気感も漂います。
海の町ならではのビーチもとても美しく、いつまでも眺めていられそうな美しい風景が広がります。
フィステーラの道のアルベルゲ
フィステーラの道では、長くても10〜15km区間ごとにアルベルゲがあるため、分割して歩くのが簡単な巡礼路です。
約90kmの巡礼路のため、3日間で歩く方が多いフィステーラの道ですが、1日およそ30km歩くのは大変に感じる方は、4〜5日に分けてご自身のペースで歩くことも可能な巡礼路です。
フィステーラの道を歩く人はどれくらいいるの?
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでのスペイン巡礼を終えてから、フィステーラまで歩く巡礼者はそう多ありません。
フィステーラの道を歩いてみた体験では、フィステーラの道を歩く人はサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼を終えた人の1割にも満たない印象です。
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの賑わいが嘘のように、しんとした道のりを歩くカミーノです。
フィステーラの地に興味はあるけれど、日程的に難しい方や、歩くことはサンティアゴ・デ・コンポステーラで終える方は、バスや日帰りツアーでフィステーラを訪れるのも一般的な方法です。
バスでは、サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィステーラまでは約3時間でアクセスできます。
ツアーでは、聖母マリアが船で現れたという言い伝えのある場所に教会が建てられているムシアにも訪れることができます。
ムシアは「ムシアの道Camino de Muxía」と呼ばれる巡礼路の終着点であり、フィステーラの道と同じくサンティアゴ・デ・コンポステーラを出発点とした巡礼路。
フィステーラの道とムシアの道はサンティアゴ・デ・コンポステーラから3分の2ほどは同じルートを辿り、途中で分岐します。
サンティアゴ・デ・コンポステーラからムシアを目指し、ムシアからフィステーラへと巡礼するのも、最終目的地への古くからの巡礼ルートです。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの郵便局にて不要な荷物を預けられる
フィステーラの道を歩くとき、他の巡礼路を歩いてサンティアゴ・デ・コンポステーラに到着した後、フィステーラの道を歩く方がほとんどです。
フィステーラの道の巡礼路はおよそ90km。
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでのカミーノと比べるととても短い巡礼路なため、荷物も必要最小限で歩くことができます。
そのため、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの長い旅路の荷物をサンティアゴ・デ・コンポステーラの郵便局に預けて、より身軽な状態で歩くことも可能です。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの郵便局では、1日3.5ユーロでバックパックをはじめ、不要な荷物を預かってくれますよ。
フィステーラの道を歩く前に荷物を預け、再びサンティアゴ・デ・コンポステーラに戻った時に預けた荷物を受け取ることができます。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの郵便局
8:30~20:30(12月1日~2月末日までは土日休業)
フィステーラで靴を燃やす習慣
フィステーラに到着した巡礼者たちは、海に入り体を清め、着ていた衣類と巡礼で履いていた靴を燃やすという習慣がありました。
巡礼中には、そんな話を耳にすることもあるかもしれません。
しかし、靴や衣類を燃やすことは、火事への懸念や燃えたあとの景観破壊、ゴミの問題から現在は禁止されています。
その為、中には小さな紙に自分だけの言葉を書いて燃やす人もいます。
燃やすという行為で、自分にとって不要な過去や想念を捨て去り、望む方向へと向かっていくきっかけになっているのかもしれません。
スペイン巡礼をする人の思いは人それぞれ。ただただ自分の楽しみだけのために歩く人もいれば、もやもやした何かを手放したくて歩く人、自分なりの答えを探している人、それぞれの理由があります。
印象的だったのは、何度もカミーノをしている仙人のような風貌の老人の言葉。
「サンティアゴまでのカミーノは、歌い笑い踊り、食べて飲んで人との出会いを楽しむ道だ。フィステーラの道は自分の中の答えを知る道だ。」
フィステーラの道は、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでのカミーノと違い、人や町に出会うことは少なくほとんどの時間を自分一人で過ごします。
涙を流しながら小石を海に投げる人、感慨深くただ海を見つめる人とサンティアゴ・デ・コンポステーラとは違った雰囲気に包まれているフィステーラ岬。
サンティアゴ・デ・コンポステーラが愛と幸せに包まれた交差点のような場所ならば、フィステーラは本来の自分や望みを素直に受け入れるような場所なのかもしれません。
【カミーノ第二の終着点】世界の果てを目指すフィステーラの道
「世界の果て」と呼ばれるカミーノの第二の目的地フィステーラ。
これまで歩いてきた道が終わり、壮大な海だけが目の前に悠然と広がる地。
決して終わることのない、それぞれの道を強く照らしてくれるような美しい場所です。
サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィステーラまで足を伸ばしてみるのもおすすめですよ。
コメント