【スペイン巡礼の道】サンティアゴまでの主要8ルートを解説【カミーノ】
本記事では、スペイン巡礼の主要な8つのルートについて解説します。
スペイン巡礼と聞いて、誰もがまず思い浮かべるのが最も有名なフランス人の道。
古くから人々がサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し歩いていたスペイン巡礼の道は、ヨーロッパ各地から無数に存在しています。
その中でも、宿の数や道順を示すサインの数など巡礼者がより快適に歩きやすいように環境が整えられており、巡礼路に関する情報も充実している8つの主要なルートがあります。
フランス、ポルトガル、そしてスペインの、総距離や訪れる地方、景色も文化も異なるスペイン巡礼の主要な8つのルートをご紹介します。
【スペイン巡礼の道】サンティアゴまでの主要8ルートを解説【カミーノ】
【フランス人の道】
764km / 約33日間
最も有名で人気のあるルート
【北の道】
824km / 約34日間
海岸線を歩く最も景観の美しいルート
【プリミティポの道】
313km / 約14日間
山間部を歩く巡礼者の少ないルート
【ポルトガルの道】
625km / 約25日間
ポルトガルを縦断するルート
【ポルトガル海岸の道】
266km / 約13日間
海岸線を歩く初心者におすすめのルート
【イギリス人の道】
119km / 約5日間
1週間以内で歩くことができる短いルート
【銀の道】
970km / 約36日間
スペインを縦断する最も距離の長いルート
【サナブレスの道】
369km / 約13日間
銀の道と合わせて歩くことができるルート
【フランス人の道】764km/約33日間
最も有名で人気の高いルート
フランス人の道は、スペイン巡礼の無数にある巡礼路の中で最も有名で人気の高いルート。
スペイン巡礼を一躍有名にしたパウロ・コエーリョの小説「星の巡礼」や、アメリカ映画「星の旅人たち」で主人公たちが歩いたのも、このフランス人の道。
スペイン巡礼の代名詞とも言えるフランス人の道は、はじめてスペイン巡礼をする方が最初に選ぶことが多いルートでもあります。
Camino Francés
総距離:764km
所要日数:約33日間
出発地:サンジャンピエトポー(フランス)
フランス人の道の特徴
フランス人の道は、巡礼者用の宿アルベルゲや巡礼路を示すサインが充実しているルート。
バルや飲食店の数も多く、巡礼に関する環境が最も整備されています。
フランス人の道は最も巡礼者の数が多いルートであり、「道が混雑する」巡礼路としても知られ、宿や巡礼路ではワイワイ賑やかな雰囲気が。
フランス人の道を歩きたいけれどにぎやかすぎるのは好みではない方は、巡礼者の数が多い6〜9月を避けて巡礼するのがおすすめです。
巡礼者の数がピークになる7月や8月は安い宿はすぐに満室になることが頻繁にあります。
フランス人の道は宿が充実しているため、宿を選ばなければ毎晩宿を確保することができますが、安い宿に泊まりたい方は早朝に出発することが必須です。
フランス人の道の見どころ
フランス人の道は、フランスから始まりスペインを横断するルートです。
カタルーニャ州から始まり、アラゴン州、カスティーリャ・イ・レオン州を通過しガリシア州へ。
美しい草原やまっすぐに伸びる道、放牧された羊や羊飼いといった、まさにスペイン巡礼らしさたっぷりの景色が目の前に広がります。
ブルゴスやルーゴ、パンプローナといったその地方を代表する大都市にも訪れることができます。
世界遺産に登録されているブルゴスの大聖堂をはじめ、巡礼路上にも多くの歴史的な建築が残されており、見どころの多い巡礼路です。
【北の道】824km/約34日間
海岸線を歩く最も景観の美しいルート
北の道は、北スペインの海岸線に沿って歩く海を存分に楽しむことができる巡礼路。
北スペインは緑の多い地域としても知られ、最も景観の美しいルートとして知られています。
アップダウンが多い区間があることから中級者向けの巡礼路とも言われています。
Camino del Norte
総距離:824km
所要日数:約34日間
出発地:Irunイルン
Arzúaアルスアからはフランス人の道に合流し、残りの39kmはフランス人の道を歩きます。
北の道の特徴
北の道はスペインとフランスの国境沿いの町イルンを起点に、北スペインを4州にまたがって横断するルートです。
フランス人の道が初心者向きの巡礼路であれば、北の道はしばしば中級者向きのルートと言われます。
北の道の最初の州であるバスク州ではアップダウンが多く体力が必要な区間が続きます。
実際に北の道を歩いた体験では、大きなアップダウンはありますが、カミーノの良さである普通の人の道であることは変わらず難所や技術が必要な箇所はありません。
個人的には初心者やはじめてスペイン巡礼をする方でも楽しめる範囲内だと感じました。
とはいえ、初日にハードなステージがあり、その後もアップダウンが続きます。
カミーノに慣れるまでは事前にルート情報をチェックしたり、無理をしないで歩を進める、ほどよい距離で休むことが楽しむためのポイントです。
バスク州以降の3つの州はほとんどアップダウンはなく平坦で歩きやすい道が続きます。
北の道の見どころ
スペイン巡礼路の中で最も美しいルートと言われる北の道。
フランスとスペインの国境から、バスク地方、カンタブリア地方、アストゥリアス地方、そしてガリシア地方と北スペインの4つの地方を横断します。
巡礼路の多くの区間を海を望みながら歩き、主要な巡礼路の中でも海岸線に沿って歩くのは、北の道とポルトガル海岸の道だけ。
目の前に広がるカンタブリア海はもちろん、ビーチや美しい港町、海辺の街も数多くあり、ゆるりとした開放的な雰囲気を楽しめる、海の道と呼びたくなるような巡礼路です。
また北の道のある北スペインは、「緑のスペイン」の異名を持つほどスペインの中でも緑が美しい自然豊かな地域。
美しいカンタブリア海と鮮やかな緑が美しい草木や山が目の前に広がる自然の美しさをこれでもかと感じられる巡礼路です。
美食の街として知られるサン・セバスチャンをはじめ、スペインで最も美しい村に登録されている中世の村サンティリャーナ・デル・マルなど優美で趣のある街を訪れることができます。
【プリミティボの道】313km/約14日間
山間部を歩く巡礼者の少ないルート
プリミティボの道は、ほとんど舗装した道を歩くことのないオフロードを楽しめるルート。
多くの区間を山間部を歩き、巡礼者が少ないルートとしても知られています。
連日激しいアップダウンが続くことから中級者以上向けのルートと言われています。
プリミティボとは「最初の」という意味があり、原始の道として知られる道です。
Camino Primitivo
総距離:313km
所要日数:約14日間
出発地:Oviedoオビエド
Melideメリデからフランス人の道に合流し、残りの55kmはフランス人の道を歩きます。
プリミティボの道の特徴
プリミティボの道の大きな特徴は、山間部を歩くことと巡礼者の数が少ないこと。
巡礼路のほとんどの区間で山間部を歩き、山越えや連日の激しいアップダウンがあるため中級者以上の方に向いているルートです。
雨の多い地域でもあり、ぬかるみができやすいのも特徴です。
プリミティボの道を歩いた巡礼者の話では、1日のうちに誰にも会わないことや、宿の宿泊客は自分だけといったこともあったそう。
また食料を買える場所がない区間もあり、事前に水と食料の準備をしっかりすることが大切です。
プリミティボの道の出発地であるオビエドへは北の道からも道が繋がっており、北の道からそのままプリミティボの道へ入ることも可能です。
プリミティボの道の見どころ
プリミティボの道の見どころはなんといっても山間部の美しい風景。
巡礼者が少ない点もプリミティボの魅力のひとつ。山岳地帯の中で思う存分自然の音や山岳地帯の豊かな風景をじっくりと心ゆくまで味わうことができます。
多くの時間を山間部で過ごすプリミティボの道ですが、ガリシア州の主要都市ルーゴを訪れることができます。
【ポルトガルの道】625km/約25日間
ポルトガルを縦断するルート
ポルトガルの道はリスボンを起点にポルトガルを縦断しスペインに入るルートです。
2つの国を楽しむことができ、ポルトガルの主要都市を巡ることができます。
Camino Portugués
総距離:625km
所要日数:約25日間
出発地:リスボン(ポルトガル)
ポルトガルの道の特徴
ポルトガルの道は、ポルトガルの首都リスボンから始まり人気都市ポルトを通過してスペインのガリシア州に入ります。
ポルトからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでは巡礼者用の宿泊施設が充実していますが、リスボンからポルト間は宿泊施設の数は多くありません。
ポルトガルの道を歩いた巡礼者の話によると、アルベルゲの数が少なくどこもいっぱいで、野宿したこともあったそうです。
ポルトガルの道を歩く場合は、アルベルゲの位置や状況を把握しておくのがおすすめです。
とはいえ、アルベルゲ以外の一般の宿泊施設も選択肢に入れることで、宿の確保は格段に簡単になりますよ。
ポルトガルの道の見どころ
ポルトガルとスペイン、二つの国を楽しめることはポルトガルの道の大きな魅力です。
首都リスボン、第3の都市コインブラ、そして第2の都市ポルトとポルトガルの主要都市を通過します。
ポルトからはポルトガル海岸の道を歩くこともできます。
【ポルトガル海岸の道】266km/約13日間
海岸線を歩く初心者におすすめのルート
ポルトガル海岸の道はその名の通り海岸線に沿って歩く道。
美しい大西洋を望みながら歩きます。
ポルトガルとスペインの二カ国を楽しむことができ、所要日数も約2週間と短く、平坦な区間が多いため初心者でも歩きやすいルートです。
総距離:266km
所要日数:約13日間
スタート地点:ポルト(ポルトガル)
ポルトガル海岸の道の特徴
全体的に平坦な道が多く初心者でも歩きやすいのがポルトガル海岸の道です。
多くの道が整備されていて巡礼者用の宿泊施設や道順を示すサインも充実しています。
時折アップダウンはありますが、過酷な高低差はありません。
1日のルートのどこかで町があるので食料や飲料を気にせずに歩くことができます。
どの視点から見ても歩きやすい要素が整っている初めてのカミーノにもオススメのルートです。
ポルトガル海岸の道の見どころ
ポルトガル海岸の道の最大の魅力は広大な大西洋を眺めながら歩くこと。
多くの区間を海岸に沿って歩くこのルートでは、毎日表情の変わる大西洋を見ながら歩き、一日の終わりには水平線に沈む夕日を眺める極上の時間を過ごすことができます。
また北ポルトガルとスペインのガリシア地方と二つの国を楽しめるのも魅力的。
ポルトガルとスペイン、海と山、いろいろな意味で二度美味しいルートです。
【イギリス人の道】119km/約5日間
1週間以内で歩くことができる短いルート
イギリス人の道はスペイン巡礼路の中で最も短いルートです。
イギリス人の道の出発地点はフェロールとア・コルーニャの2つの出発点があります。
約5日または約4日と短い期間で歩くことができるため、時間がとりにくい状況にある方や観光旅行の合間にも気軽に巡礼を楽しむことができます。
出発地:フェロール
総距離:119km
所要日数:約5日間
出発地:ア・コルーニャ
総距離:72km
所要日数:約4日間
サンティアゴ・デ・コンポステーラまで残り41km地点のBrumaブルマで二つの出発点の道が合流します。
巡礼証明書の発行条件はサンティアゴ・デ・コンポステーラから100km以上のため、ア・コルーニャからの巡礼では証明書は発行されません。
イギリス人の道の特徴
巡礼路の中で最も総距離の短いイギリス人の道は、短い日程でルートの全行程を歩きたいという方におすすめです。
11世紀、十字軍やテンプル騎士団がエルサレムへ向かう途中にサンティアゴへ巡礼し、聖地エルサレムまでの安全を祈願したと言われていますが、その際に彼らはア・コルーニャからサンティアゴを目指したと伝えられています。
行程は短いですが公共の巡礼者用の宿泊施設が5つしかないため、事前に宿泊施設についてリサーチしておく必要があります。
ピーク時には宿を確保するのが難しいこともありますが、ホテルなど一般の宿泊施設も利用する方はより簡単に宿を確保することができます。
巡礼路全体を通してサインが充実しており、大きなアップダウンはありません。
イギリス人の道の見どころ
巡礼路全体を通してガリシア地方ののどかな農村部の風景を楽しむことができます。
出発地点のフェロールやア・コルーニャは海に面した港町。
サンティアゴ・デ・コンポステーラへと向かい内陸を歩く巡礼路ではありますが、フェロールを出発すると海岸線を歩きガリシア地方の地形の特徴である美しいリアス式海岸を眺めることができます。
ア・コルーニャは海に囲まれた情景の美しい街としても知られ、世界遺産であるヘラクレスの塔があります。
ガリシア地方の美しく牧歌的な風景をとことん味わうことができる巡礼路です。
【銀の道】970km/約36日間
スペインを縦断する最も距離の長いルート
銀の道は主要な巡礼路の中で最も距離の長いルートです。
スペイン南部の都市セビーリャから北上しスペインを縦断します。
日差しを遮るものがない道が続くため夏は巡礼を続けるのが困難なほど日差しが強く、3月または4月に巡礼をスタートすることが推奨されています。
Camino de la Plata
総距離:970km
所要日数:約36日間
出発地:セビーリャ
出発点のセビーリャから614km地点のGranja de la Moreruelaグランハ・デ・ラ・モレルエラで分岐点があります。
銀の道を進み続けると、その先のAstorgaアストルガでフランス人の道に合流し、残り260kmはフランス人の道を歩きます。
フランス人の賑やかな雰囲気より、ゆったりとした巡礼を好む方は、分岐点のグランハ・デ・ラ・モレルエラでサナブレスの道を歩く選択肢があります。
銀の道の特徴
銀の道は、日陰のない区間が多く夏には過酷さを感じるルートとして有名です。
強い日差しを遮るものが何もなくバルもない道が続き、夏の巡礼では暑さによって巡礼を途中で終える方が多くいます。
その強烈な暑さのため夏の巡礼は危険で、銀の道の巡礼は3月〜4月にスタートするのが一般的です。
銀の道の見どころ
南スペインのアンダルシア地方から、北スペインのガリシア地方まで北上しながらスペインを縦断する銀の道。
まるで沖縄から北海道に向かうように、ひとつの国の中で変わっていく景色や文化をグラデーションのように楽しむことができます。
スタート地点のアンダルシア地方を代表する都市セビーリャに始まり、中世の街並みの中で学生たちが活き活きと暮らすサラマンカなどスペインを代表する都市を訪れることができます。
【サナブレスの道】369km/約13日間
銀の道と合わせて歩くことができるルート
サナブレスの道のスタート地点であるGranja de Moreruelaグランハ・デ・モレルエラは、銀の道の巡礼路上にある町です。
グランハ・デ・モレルエラは、銀の道からフランス人の道へ合流するルートと、サナブレスの道への分岐点になっているため、ゆったりとした巡礼を好む巡礼者は銀の道からサナブレスの道へ進みます。
Camino Sanabrés
総距離:369km
所要日数:約13日
出発地:グランハ・デ・モレルエラ
サナブレスの道の特徴
銀の道を歩く方が、グランハ・デ・モレルエラからサナブレスの道へ進む場合、銀の道の総距離からさらに100kmほど長くなります。
連日アップダウンが続き、峠や山間部を通る中級者以上向けのルートです。
サナブレスの道の見どころ
山間部の風景や田園地帯など、のどかな静けさや自然をじっくりと楽しめる巡礼路です。
巡礼路上にあるガリシア地方を代表する都市オーレンセは温泉の街として知られ、街中や川沿いにある温泉でゆったりとくつろぐことができます。
【スペイン巡礼の道】サンティアゴまでの主要8ルートを解説【カミーノ】まとめ
それぞれのルートによって、歩く地方も、目に映る景色も文化も全く異なる11の巡礼路。
どの巡礼路もそのルートでしか味わうことのできない魅力があります。
日程で選ぶもよし、景色で選ぶもよし。
あなたの最もワクワクするルートを探してみてくださいね!
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