ヒターノゆかりの地をめぐる旅【サクロモンテ・洞窟住居・フラメンコ】

本記事では、ヒターノとフラメンコにゆかりのあるアンダルシア地方の街をご紹介します。

フラメンコは、今やスペインの代名詞とも言える誰もが知る世界的な芸能として知られています。

スペインの踊りや音楽というイメージが強いフラメンコですが、実はスペインではヒターノと呼ばれる、いわゆるロマやジプシーの人々の文化だということは、日本ではあまり知られていません。

現在では、フラメンコはヒターノの人たちにとどまらず、日本人をはじめ人種も出身地も関係なく多くの人が魅了され、スペインへ渡り学ぶ人や、プロとして活躍する人もいます。

フラメンコの生みの親というリスペクトを込めて、ヒターノとフラメンコゆかりの地をご紹介します。






フラメンコの生みの親ヒターノ

北インドに起源を持つ移動型民族であるジプシー、またはロマと呼ばれる人々。北インドから何世紀もの時を経てヨーロッパ各地に暮らしている彼らを、スペインではヒターノGitanoと呼ばれています。

スペインの中でも特に南スペインのアンダルシア地方に多く住んでいるヒターノ。もともとは移動型民族ですが、現在では定住している人々も多くいます。

アンダルシア地方の都市グラナダは、ヒターノの方達が多く住む地域でもあり、本場のフラメンコを見ることができる場所として知られています。

グラナダはレコンキスタ以前、当時のイスラム王朝ナスル朝の首都だった場所。

アンダルシア地方は古くからさまざまな民族、文化が混ざり合う多様性に満ちた土地でした。

フラメンコはヒターノの人々が自然な表現として、日常の中で生み出された踊りであり歌であるわけですが、多様性に満ちた環境でさまざまなものが融合した表現という人もいます。






ヒターノやロマという括りだけを見て人を区別する見方をする人も残っていますが、誤解を恐れぬ言い方をすればヒターノの方々も普通の人です。

彼らの自然な表現として生まれたフラメンコは、今や世界中の人に愛され多くの人に踊られています。

セビーリャ周辺は現在のフラメンコの中心地とも言われ、セビーリャの街を歩けば日常の中で路上で歌い踊る人々に出会えます。

グラナダのサクロモンテはかつて「 ジプシー地区」と呼ばれ、ヒターノコミューンとして知られていましたが、現在では芸術家や音楽家も集まりより開放的な雰囲気になっています。




ヒターノゆかりの地①【グラナダ】ヒターノ居住区サクロモンテ

グラナダのサクロモンテ地区Sacromonte は古くからヒターノ居住区として知られています。

本場のフラメンコを見ることができる場所をしても有名で、かつて住居だった洞窟タブラオでフラメンコの踊り手バイラオール、バイラオーラたちの汗が飛び散り息遣いが聞こえるほど間近でフラメンコを見ることができます。

プロが演じるタブラオでのフラメンコはもちろん、真っ白な外壁の家々が連なる迷路のような小道を歩けばバスキングしているフラメンコギターの音が次々に聞こえてきます。

グラナダは自由奔放な雰囲気が強い街で、一人または二人で気ままに好きに歌って弾いている人々に多く出会えますよ。




いつしかヒターノ居住区として知られるサクロモンテ地区にはフラメンコに魅了された外国人が集まるようになり、フラメンコに留まらず芸術家や音楽家が集まる街になっています。

ただ街を歩いているだけでそこかしこで気軽なフラメンコギターやカンテが聞こえ、フラメンコが日常の中に自然にあるものだということを強く感じられる魅力的な街です。





サクロモンテにはヒターノの伝統料理を食べることができるレストランがあったりと、彼らの文化を身近に感じることができますよ。







ヒターノゆかりの地②【グアディクス】2000の洞窟住居がある町

グラナダから東の40kmほどの場所に位置するグアディクスGuadix

ここはヒターノの方々が住んでいた洞窟住居が残る場所として知られています。

村の後方に見える茶色でゴツゴツとした岩の斜面には、大きな穴がぽかりと無数に空いていて、その数は2000にも上ると言われています。

最盛期には岩肌をくり抜いた洞窟住居が全て埋まるほど多くに人々が住んでいました。




現在では真っ白に美しくペイントされた家らしい洞窟住居に住む人も多く、観光客向けに洞窟住居が宿泊施設になっている場所もあり実際に宿泊することもできますよ。










ヒターノゆかりの地③【セビーリャ】フラメンコ留学の中心地

フラメンコの本場セビーリャSevillaはフラメンコ留学の地として知られる街。

フラメンコを学ぶことができる学校が数多くありフラメンコ留学といえばセビーリャと言われるほど、本場のフラメンコを学べるとして世界各国から人々が集まっています。

セビーリャはアンダルシア地方で最も大きな都市であり、スペイン国内でも4番目の規模を誇る大都市。

発展している都市であるのも多くの学校を運営する良い環境が整えられています。







セビーリャの街を歩いていると、探さなくてもそこかしこでフラメンコを見ることができます。

もうひとつのフラメンコの街としてグラナダがありますが、個人的には雰囲気の違いに面白さを感じました。

街の印象としてグラナダは生々しい人間らしさを感じるのに対し、セビーリャはより洗練された美しさが際立ちます。

フラメンコも、グラナダは自由気ままに好きなように楽しむことを優先している雰囲気、セビーリャは技術や学ぶことに意欲的な雰囲気。


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個人的にはセビーリャは学ぶ、グラナダは感じるといった雰囲気を感じました





セビーリャの路上では、即席のタブラオを用意し、歌い手のカンタオールやカンタオーラ、踊り手のバイラオールやバイラオーラ、そしてギタリストと4人から5人で演じています。

また伝統的なフラメンコに現代風のアレンジを取り入れた新しいインスピレーションのフラメンコを楽しむことができるのもセビーリャならではの魅力。

セビーリャは特に、民族の垣根なく若い人々が意欲的に路上でパフォーマンスしているのが印象的でした。

1日セビーリャを歩いただけでも6組のフラメンコグループに出会い、フラメンコがセビーリャの日常に馴染んでいるのが強く分かります。








人々を魅了し続けるヒターノとフラメンコ

ヒターノそしてフラメンコに惹かれ訪れたヒターノゆかりの地でしたが、訪れてみて感じたのは「 ヒターノ 」も「 フラメンコ 」もひとつの固有名詞に過ぎないということ。

もちろん、ヒターノの方々にリスペクトを感じますし、フラメンコは魂が震えるほど感動しました。

そして良い意味で、彼らも普通の人であり、フラメンコも自然なひとつの表現であると感じています。

フラメンコは今やさまざまなバックグラウンドを持つ人々が踊りギターを鳴らし、多くの人が自由に好きな場所で表現している光景をさまざまな場所で見られたことはこの旅の最も嬉しい光景でした。








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