スペイン巡礼とは?世界で最も歩きやすいロングトレイル
スペイン巡礼とは、キリスト教三大聖地のひとつであるサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し巡礼すること。
サンティアゴ・デ・コンポステーラはスペインに位置するため、スペイン巡礼と呼ばれています。
巡礼路とは、聖地への参拝を目的とし各地からその場所を目指して歩いた道のこと。
現代では、交通機関が発達し必ずしも歩く必要はありませんが、昔は電車やバスといった便利な乗り物がなかったため歩いて巡礼していました。
もともとは、宗教的な意味をもって聖地を訪れるのが巡礼でしたが、現代では宗教に関わらず、自分自身の楽しみのために歩くことができるロングトレイルとしても多くの人々に愛されています。
スペイン巡礼の大きな魅力であり特徴は、 ” 普通の人の道 ” だということです。
長い歴史の中で、多くの人々がサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し巡礼してきました。
登山のように訓練して得られる技術も要らなければ、アメリカのアパラチアントレイルなどのようにテントをはじめとする重装備が必要なわけでもありません。
巡礼路沿いにはアルベルゲと呼ばれる巡礼者用の宿があり、人の住む町や村も頻繁に通るため食料の確保も簡単です。
年配の巡礼者も多く、車椅子で巡礼する人や、手や足が自由に動かせない方がパラスポーツで用いられるような車椅子を利用して巡礼している方にも出会いました。
自転車でも馬でも巡礼でき、犬と一緒に旅するように巡礼している方もいます。
巡礼したいと感じる方が誰でも巡礼できるのが、スペイン巡礼です。
スペイン巡礼とは?サンティアゴ・デ・コンポステーラへの道を歩く旅
キリスト教には宗教的に重要な場所とされる三大聖地があります。
バチカン市国、エルサレム、そしてサンティアゴ・デ・コンポステーラです。
スペインのガリシア州に位置するサンティアゴ・デ・コンポステーラを目的地にした巡礼がスペイン巡礼です。
日本人にとっては、バチカン市国、エルサレムに比べ、サンティアゴ・デ・コンポステーラという地はあまり聞きなれないかもしれません。
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、キリストの弟子であった聖ヤコブの遺骸が眠っている場所として三大聖地のひとつとして知られている場所です。
聖ヤコブはスペイン語でサンティアゴまたはサンチャゴと呼ばれ、コンポステーラとは星の野原を意味します。
とはいえ、現代では宗教的な意味を持って歩く巡礼者は少なく、海外の方や敬虔な仏教徒ではない方が四国お遍路を歩くように、多くの人々が自分自身の好奇心や楽しみのために歩いています。
海外の方が四国お遍路を歩き日本の文化や風習を体験できるように、私たちがスペイン巡礼をするとき、キリスト教に基づいた文化や人々の生活、建造物や芸術を楽しむことができます。
そんなスペイン巡礼ならではの多様性や新しいものを目にする楽しさも味わうことができます。
スペイン巡礼は「世界で最も歩きやすいロングトレイル」
寝る場所はどうするの?
知らない土地で道に迷ったりしないかな?
スペイン巡礼をしてみたいと考えた時、そんな疑問が頭をよぎるかもしれません。
スペイン巡礼の大きな魅力のひとつは、毎晩安心して宿で眠ることができ、巡礼路上には道順を示すサインが整備されていること。
また、スペイン巡礼に特化したアプリでは、GPSで現在地とルートの全行程を地図上で確認することができるため、道に迷う心配はありません。
- 宿泊施設が充実している
- 巡礼路を示すサインが充実している
- 街や村を頻繁に訪れる
①宿泊施設が充実している
スペイン巡礼の巡礼路には、アルベルゲと呼ばれる巡礼者用の宿泊施設が非常に多く整備されています。
ホテルやホステル、ゲストハウスといった一般的な宿泊施設はもちろん、巡礼者のために建てられた巡礼者用の宿泊施設アルベルゲがあるため、テントは要りません。
巡礼者用の宿泊施設の数も充実しており、安心して毎晩屋根の下で眠ることができます。
②巡礼路を示すサインが充実している
巡礼路上には、道順を示すサインが至る所に設置されています。
壁にペンキで描かれていたり、写真のように看板のようになっていたりと種類は様々ですが、スペイン巡礼のシンボルである黄色い矢印で道順が描かれています。
またスペイン巡礼に特化したアプリがあり、地図上にルートが表示されるので、いつでもルートを確認しながら安心して巡礼することができます。
③街や村を頻繁に訪れる
スペイン巡礼では、街や村を多く訪れます。
大きな街だけではなく、スペイン巡礼をしなければ訪れることがなかったかもしれないローカルな町や村を訪れることができるのはスペイン巡礼の大きな魅力。
知らない町を訪れる楽しさだけでなく、頻繁に町を訪れるため大量の食料を持ち運ぶ必要がありません。
もちろん、軽食を常に持っていることは大切ですが、1日にうちにバルやレストラン、スーパーマーケットがあったり、巡礼者用の宿泊施設で食事の提供があることも多いので、必要最低限の食料のみで巡礼することができます。
体験して感じたスペイン巡礼の魅力
私自身はスペイン巡礼の3つの巡礼路を歩いていますが、歩けば歩くほどその魅力にハマり、スペイン巡礼のことを考えるだけでワクワクが止まりません。
スペイン巡礼では、多くの時間をただひたすらに歩いて過ごします。
電車や車といった現代の乗り物はとても便利で感謝を覚えますが、人が歩く速度で見える景色はまた違って見えます。
自然の中を漂う新緑の空気の香り、太陽に照らされた雨水の美しさ、スペインの深い青の空、目の前の些細な美しさをこれでもかと堪能しながら、ただただに幸せを感じることができます。
そしてサンティアゴ・デ・コンポステーラという目的地はあるものの、そこに辿り着くまでの道のりが何よりも楽しく、まだ出会ったことのない人々との出会い、美味しい食べ物、美しい景色を楽しみ、その旅自体が喜びであることを感じることができます。
ただその道を歩くことの自由さと喜び。
そしてその感覚を日常に持って帰ることができることは、何よりスペイン巡礼を体験した嬉しさを感じる部分です。
スペイン巡礼で感じる自由さや喜びを日常でも同じように感じることができることは、日々の生活という旅をより豊かに楽しく感じさせてくれます。
【スペイン巡礼のルート】主要な8つの巡礼路
スペイン巡礼の目的地はサンティアゴ・デ・コンポステーラと決まっていますが、スタート地点は人それぞれ。
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼路は無数に存在し、ドイツやオーストリア、イタリアといったヨーロッパ各地から道は繋がっています。
その中でも、特に巡礼者用の宿や道順を示すサインが充実しており、情報量も多い8つの主要な巡礼路があります。
8つの主要な巡礼路の中で、最も有名で人気があるのが「フランス人の道」というルート。
スペインの国境近くにあるフランスのサン・ ジャン・ピエ・ド・ポーという町からサンティアゴ・デ・コンポステーラまで764km、徒歩で約33日間の道のりです。
フランス人の道はスペイン巡礼をテーマに描かれた有名な作品、映画「星の旅人たち」や書籍「星の巡礼」で主人公たちが歩いたことでも知られています。
各ルートの詳細は以下の記事で解説しています。
【スペイン巡礼の歩き方は百人十色】巡礼路を分割して歩くこともできる
スペイン巡礼は必ずしも各ルートのスタート地点からサンティアゴ・デ・コンポステーラまで一度に歩かなければならない訳ではありません。
ひとつの道を3回に分けて長期休暇のたびに3分の1ずつ歩く人もいます。
また、必ずしも各巡礼路のスタート地点から始めなければいけない訳ではありません。
自分の体力や日程に合わせて、巡礼路の途中からスタートすることもできます。
サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着すると、その道を達成した証として証明書を発行してもらうことができます。
その証明書をもらうには、徒歩の場合、サンティアゴ・デ・コンポステーラから100km以上、自転車の場合200km以上の地点からスタートすることが条件になります。
巡礼中の1日の過ごし方も全て自分次第
巡礼がスタートしてからも毎日歩き続けなければならないわけではありません。
多くの人はきりの良い町で宿を探します。
滞在した町が気に入った場合、一度歩くのを中断して気がすむまでその町に滞在してからまた歩き始める人もいます。
気に行った町があれば一日でも二日でも滞在を伸ばしてその町を楽しむこともできますよ。
スペイン巡礼をしなければなかなか訪れる機会のないであろうローカルな町を観光するのもスペイン巡礼の醍醐味のひとつ。
反対に、町ではただ眠るだけで、朝から晩までひたすらに歩き続ける人もいます。
歩き方は自由自在です!
スペイン巡礼のルール
スペイン巡礼の基本的なルールは二つ。
- スタンプを集める
- サインに沿って歩く
あとは「こう歩かなければいけない」というルールはありません。
もちろんサンティアゴ・デ・コンポステーラへと続く道順はありますが、どんな巡礼にするのかは全て自分次第です。
巡礼中に気になった場所があれば、巡礼路を外れて立ち寄ってみるのもありですよ。
①スタンプを集める
目的地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラに到着するとスペイン巡礼を達成した証明書がもらえます。
その証明書の発行に必要なのがクレデンシャルと呼ばれる巡礼手帳と、そこに押されるスタンプです。
巡礼路にあるカフェや宿でもらうことのできるスタンプを一日ひとつ押してもらいます。
サンティアゴ・デ・コンポステーラまで100km以内になると一日ふたつのスタンプが必要です。
このスタンプが確かにその巡礼路を辿りましたよ、という証明になります。
クレデンシャルは巡礼者であるという身分証の役割もあり、巡礼者専用の宿に泊まるためにはクレデンシャルの提示が必要です。
②サインに沿って歩く
スペイン巡礼のルート上には、巡礼者がサンティアゴ・デ・コンポステーラまで辿り着けるように道順を示すサインがあります。
このサインに沿って歩いていきます。
基本的には、このサインに沿って歩きますが、景色の良い場所や観光名所などルート外に行きたい場所かあれば、ちょっとルートを外れて歩くのも全然ありです。
人々を魅了し続けるスペイン巡礼
同じ美味しい食べ物を食べても人によって魅力を感じる部分が違うように、スペイン巡礼の魅力も歩いた人の数だけあります。
それは人との出会いだったり、忘れていた自分との出会いだったり、美しい景色だったりするかもしれません。
私はスペイン巡礼をするまで、ロングトレイルどころかバックパックを背負って長い距離を歩くという経験がありませんでしたが、はじめてのスペイン巡礼では最初から最後まで楽しく過ごすことができました。
そんな初心者でも安心して楽しむことができる環境が整っているのがスペイン巡礼の道です。
スペイン巡礼は通称「カミーノ」と呼ばれますが、「カミーノ中毒になる」という言葉があるほど、一度歩いたらまた歩きたくなるような魅力のある巡礼路です。
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