はじめに知りたいスペイン巡礼の基礎の基礎【カミーノ】
本記事では、はじめに知りたいスペイン巡礼の基本的な情報をご紹介します。
世界三代聖地のひとつに数えられるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かうスペイン巡礼。
スペイン巡礼の巡礼路は複数ありますが、どの巡礼路もバックパックと共に生活する旅路です。
「巡礼中の宿はどうするのか」
「1日何キロくらい歩くのか」
「巡礼しやすい時期はいつなのか」
など、はじめてのスペイン巡礼で知りたい基本情報を3つの巡礼路を歩いた実体験をもとにご紹介します。
スペイン巡礼と一般的なロングトレイルとの違い
スペイン巡礼は、キリスト教の聖地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼路。
キリスト教の聖地ではありますが、現代では宗教や信仰に関係なく自分自身の喜びや楽しみのために歩く巡礼者も数多くいます。
スペイン巡礼は、巡礼路でありながらロングトレイルの道としても多くの人々に愛され続けている巡礼路です。
ロングトレイルといえば、人里離れた山間を歩き続け、テントや自炊するための道具を持ち、人の住む地はほとんど通らないような道もあります。
対照的にスペイン巡礼路の道は、巡礼者用の宿が整備されているため毎晩安心して屋根の下で眠ることができ、1日の中で町や村を通過するため、大量の食料を持ち歩く必要もありません。
スペイン巡礼の道は「普通の人のための道」と言われますが、巡礼中の宿も食事も確保するのが簡単で誰でも楽しむことができる道として知られています。
数あるロングトレイルの中でも、初心者でも歩くことができる最も歩きやすい道のひとつがスペイン巡礼です。
巡礼路はいくつあるの?
スペイン巡礼の巡礼路は、目的地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラの位置するスペイン国内、そして隣国のポルトガルやフランスからだけでも33の巡礼路があります。
ドイツやオーストリア、スカンジナビア半島などヨーロッパ各地からの巡礼路を含めると、数えきれないほどの無数の巡礼路が存在します。
その中でも主要な8つの巡礼路があり、最も有名なフランス人の道や、次いで巡礼者の数が多いポルトガル海岸の道などは、主要な8つの巡礼路のひとつです。
マイナーな巡礼路になるほど、宿の数が少なかったり、巡礼路のコンディションが難易度の高いルートになる傾向があります。
基本的にスペイン巡礼の代名詞とも言える主要な8つの巡礼路は、宿の充実度や巡礼路を示すサインも非常に整備されており、歩きやすい環境が整っています。
1日に何キロくらい歩くの?
スペイン巡礼では、1日に何キロ歩くのかは完全に個人の自由です。
1日10〜15kmくらいのペースでのんびりと歩く方もいれば、1日40kmほど歩く方もいます。
平均的には1日20km前後歩く巡礼者が多いです。
一般的には1時間でおよそ4km歩くことができます。
巡礼のペースは、何を見たいか、ご自身の身体や日程によって人それぞれ。
日によって歩く距離を変える巡礼者も多くいます。
実体験では1日30kmほど歩く日もあれば、1日4kmほどしか歩かない日もありましたよ
巡礼におすすめの時期はいつ?
上記のグラフは、月別のサンティアゴ・デ・コンポステーラに到着した巡礼者の数を表したものです。
例えば7月1日に巡礼をスタートし、8月31日にサンティアゴ・デ・コンポステーラに到着した方は、8月の巡礼者に数えられます。
夏のシーズンに巡礼する方が多く、最も巡礼者の数が多いのは8月、次いで6月、7月、9月と続きます。
スペイン巡礼の最も有名な巡礼路であるフランス人の道は、人気があるだけに特に混雑する巡礼路としても知られています。
あまり人が多いのは好みではない方は、巡礼者の多い月を避けて巡礼するのがおすすめです。
夏の時期に巡礼者が多い理由のひとつに、ヨーロッパ圏のホリデーが夏に重なることがありますが、他にも大きな理由があります。
- 秋から冬にかけて巡礼者用の宿は休業する
- 冬の巡礼は危険な巡礼路もある
スペイン巡礼の巡礼路には、巡礼者のための宿があります。
秋の終わりから冬にかけての時期は、多くの宿が休業するため宿の確保が難しくなります。
休業時期は宿によって異なりますが、11月上旬から3月下旬にかけて休業する宿が一般的です。
加えて冬の巡礼は危険が伴う巡礼路もあります。
例えば、フランス人の道ではピレネー越えがありますが、11月1日〜3月31日までは閉山してるため通過することはできません。
年によって異なりますが、4月や5月に入っても天候が巡礼に適しておらず安全に巡礼できるコンディションでない場合もあります。
個人的には、たまたま巡礼するときはいつも9月〜10月にかけて歩いていますが、巡礼路の混雑度も程よく、天候も秋の日差しに変わりつつある暑すぎない時期で快適に巡礼することができています。
一般的には、日差しの強い8月を避けた、5〜6月も巡礼者がそれほど多くなく、歩きやすい気候のためベストシーズンのひとつとされています。
巡礼中の宿はどうするの?
スペイン巡礼の巡礼路上には、アルベルゲAlbergueと呼ばれる巡礼者のための宿があります。
一般的なホテルやホステルも充実していますが、加えて巡礼者のために作られたアルベルゲがあるおかげで、毎晩安心して屋根の下で眠ることができます。
巡礼では、周りに家や店のない場所を通過することもありますが、そのような場所にもアルベルゲが作られているので一般的なロングトレイルに比べ宿の確保が非常に簡単です。
マイナーな巡礼路になればなるほど、宿の数は減る傾向にありますが、主要な8つの巡礼路、特にフランス人の道やポルトガル海岸の道といった巡礼者の多い巡礼路では、基本的に20km前後ごとの範囲内に宿があるため安心して巡礼することができます。
巡礼にテントは必要?
スペイン巡礼にテントは不要です。
巡礼路上には巡礼者用の宿アルベルゲがあるため、テントなしで巡礼することができます。
中にはテントを持ちながら巡礼する方もいますが、テントが必要なわけではなく好みでテント泊を選んでいる方々です。
スペイン巡礼では、荷物が軽ければ軽いほど楽に歩き続けることができます。
特にテント泊へのこだわりがない方は、巡礼者用の宿を利用するのがおすすめです。
巡礼路に町や村はあるの?
スペイン巡礼の大きな特徴のひとつは、頻繁に町や村を訪れること。
一面の草原や美しい大自然の中を歩くことができることはもちろん、その地域を代表する大きな街や、巡礼することがなければなかなか訪れる機会がないようなローカルな趣のある町や村を通過します。
ステージによっては、一日の中で度々町を通過することもあります。
その土地の人々が暮らす町や村を訪れ、文化や生活に触れることができること、まだ訪れたことのない美しい街を楽しめることもスペイン巡礼の大きな魅力のひとつです。
巡礼中の食事はどうするの?
スペイン巡礼では、町を頻繁に通るため食料の調達もとても簡単です。
巡礼路上にある町のバルやカフェ、レストランで巡礼中も気軽に美味しいものを楽しむことができ、大量の食料を持ち運ぶ必要はありません。
巡礼中に夜を過ごす場所の中には、周囲に飲食店やスーパーマーケットがない場合もあります。
周辺に食料を購入できる場所がない場合でも、巡礼者用の宿アルベルゲにて有料または寄付制にて夕食、朝食をいただけるのが一般的です。
食事の提供があるかどうかは、宿によって異なるので周囲に飲食店がない場合はあらかじめ確認しておくと安心ですよ。
また巡礼路やステージによって、頻繁に町を通過する日もあれば、1日の中で15〜18kmに渡り飲食店やスーパーマーケットが1軒もない場合もあります。
飲食店が少ないステージでは、あらかじめ食料と水を確保してから1日の巡礼をスタートしましょう。
巡礼中は小腹が空いたり、開いていると思っていた店が閉まっているケースもあるので、簡単に食べることができる軽食を常にバックパックに入れておくのがおすすめです。
とはいえ、飲食店が少ないステージでも、基本的にはその日1日分の食糧と水を携帯するだけで十分なので、荷物も非常に少なく、食料の面でも安心して巡礼することができます。
道順はどうやって知るの?
スペイン巡礼の巡礼路上には、ルートを示すサインが整備されています。
スペイン巡礼のシンボルである黄色い矢印、また石碑や木の案内板など、道順を示すサインが非常に多く設置されているため、簡単にルートを知ることができ安心して巡礼をすることができます。
サインの充実度は巡礼路によって異なりますが、有名な巡礼路や巡礼者の多い道ほどサインが充実している傾向にあります。
ガイドブックやアプリはあるの?
世界中の人々に愛されているスペイン巡礼のガイドブックは、巡礼路ごとに英語、スペイン語、フランス語など多言語で出版されています。
とはいえ、はじめての巡礼をするときに選ぶルートの場合はガイドブックは必要ありません。
巡礼者の少ないマイナーな巡礼路であればあるほど、宿の数やサインの数が少ない傾向にあるため、ガイドブック等が必要なケースがあります。
主要な巡礼の場合は、ルートを把握するのも簡単で、宿の数も充実しているため、ガイドブックを利用する巡礼者はごく僅かです。
ガイドブックがあるとワクワクするという方は、スペイン巡礼では1gでも荷物を軽くすることが楽に歩くコツなので、特にこだわりがなければ電子書籍がおすすめです。
現代では、巡礼路や宿泊施設の把握にアプリやWebサイトを利用するのが一般的です。
- Buen Camino
- Gronze
巡礼路のルート確認、そして宿泊施設の位置や詳細情報の把握にとても役立つのが、スペイン巡礼に特化した「Buen Camino」というアプリです。
各巡礼路のルートを地図上で確認することができ、宿泊施設の位置や詳細情報、飲食店やルート上の注意点を細かく知ることができます。
有名な巡礼路であればアプリBuen Caminoがあれば巡礼できると言えるほど、スペイン巡礼の必須アプリです。
また、スペイン巡礼の情報に特化した最も有名なWebサイトに「Gronze」があります。
Gronzeは宿泊施設の把握にとても役立つサイトで、町や村ごとの巡礼路上にある宿泊施設を一覧で確認できます。
巡礼路ではカードは使えるの?
現代では、スペインをはじめ、フランスやポルトガルでの通常の観光ではカードやスマホなどキャッシュレス決算が主流になっています。
とはいえ、スペイン巡礼においては現金が必須です。
- 巡礼者用の宿
- 小さな町や村の飲食店
巡礼中に最も現金が必要になるのは、巡礼者用の宿アルベルゲでの宿泊料金です。
アルベルゲでは現金払いのみの宿も多く、実体験ではアルベルゲの7〜8割は現金のみの印象です。
また一定の料金が定められていない、任意の額を個人で決める寄付制のアルベルゲもあり、寄付制の場合はもちろん現金が必要です。
また、巡礼中はとても小さな町や村を通過する場面もよくあります。
大きな街では多くの場合カード決算ができますが、小さな町や村の飲食店では現金払いのみのお店も多くあります。
安心して楽しめる環境が十分に整っているスペイン巡礼
スペイン巡礼が多くの人に愛される大きな理由のひとつは、巡礼しやすい環境がこれでもかというほど整っていることです。
毎晩屋根の下で眠ることができ、食料の確保も簡単、ルートを示すサインはそこかしこに見られ、宿泊施設や巡礼路を確認できる便利なアプリもあります。
これほどまでに、あらゆる面で環境が整えられている道は世界中を見てもありません。
宿泊施設が充実しており、頻繁に町を訪れることから、ご自身の身体やコンディションに合わせて1日に歩く距離を調整することも簡単です。
スペイン巡礼の道は、巡礼したいと思った方が気軽に安心して楽しめる巡礼路です。
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